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サメラ・ハイウインドが浚われた。

真一文字に唇を噛んで、残留品を見渡す。手掛かりになるような何かを探したが、預かったというメモ一枚だけが見つかっただけだ。
どうしてセシルがサメラの部屋に居たのを知っていたのかが疑問だが、その情報さえ出所が理解できれば解るような気がする。下唇を噛んで、サメラは事実を受け入れるように、目を閉じて言い聞かせる。セシルが居ない今、しなければいけない事が浮かんだ。
王がいないとなれば様々な問題が起きる。野暮な貴族がくだを巻き悪法を生み出すかもしれない、もしかすると、王が隷属になる可能性だって浮かぶ。
サメラの役目は王を守ることだ、今居ないのなら、変わるしかないだろう?。なぁ、セシル、どう思う?。居ない相手を思い浮かべて、サメラはため息を一つ。

「刃を貸せ」
「閣下?」
「早く」

せかすように奪うと、サメラは長い髪を簡素に束ねて、刃で引き裂く。ぱさり、と乾いた音と舞い落ちる銀に部屋の中が沈黙した。長かった髪を肩までにして、つり上がる目も穏やかそうな表情が浮かぶ。双子だからできる芸当なのだが。
「…情報は操作する。サメラ・ハイウインドが浚われた。それだけだ、…近衛兵長補佐官は、僕の所に来るようにと、臨時で近衛兵長代理権限を発動させるつもりだからね」

対策を練るから、僕は戻るよ。これ以上の波紋を広げる訳には行かないし、一切口外を禁じる。いい?。と有無を言わさない強い口調で、近衛兵に言い聞かせて、ローザの手を取る。

「行こうか、ローザ。」
「え、えぇ。」

小さく呟いて、サメラ…セシルは、唸る。これかいつまでも続かないようにしないと、なんて考えてサメラの眉間に皺がよる。

「ごめん」

なんて呟いて、セシルは肩を鳴らしながらバロン城廊下を歩いて、風の音を聞く。これから起こる事は、どうにかして消さなければならないな。と眉間を抑えて歩く姿は、きっとしないだろう、なんでも抱える癖は双子特有だな。と思考が働いて、気にしないように、平然と歩く。今は、セシル・ハーヴィだ。と言い聞かせて靴の音を鳴らし歩き方も変えた。

「ローザ、怒ってる?」

誰かに言い聞かせるような口振りは、穏やかな片割れを彷彿させる口調の声色を纏い、穏やかそうな表情を曇らせた。


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あきゅろす。
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