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三回は、異常の合図。

「で、だ。話を戻してだな、私は守りたいものの為に刃を奮うんだ。牙を向いた奴に牙を向け返すだけだ、心配しないでほしい。」

そう言い切る義兄弟は、幼き頃見たシュトラールの姿に見えた。誰にでも笑顔を向けて、たおやかに笑う武人はいつまでも変わらぬ憧れの人だ。いや、彼女と全く逆の性格を持つ目の前の義兄弟だ、似ているはずがないんだと割り切ってローザがため息をついた刹那であった。

…ピィピィピィー…

笛の音が夜闇を裂いて聞こえる。三回は、異常の合図。ローザが子供の遊びかしら、なんて言うが構う暇はない。一大事だ。慌てて、窓から飛び出す。そう、セシル国王陛下が居を構えるこの場所は一番バロンで高い。落ちていくと必然的に自分の階にたどり着く。窓のサッシに手をかけて、勢いよく階下の部屋に雪崩れ込み自室にかける。

「セシル!」

自分の家になだれ込むと、そこは沈黙を保っていた。否、兵たちの鼾と唯一、開け放たれた窓の近くでカーテンがバサバサ主張しているだけだ。

「……やられた。」
「へい、ちょう…!」
「しっかりしろ、大丈夫か?白魔導師を呼べ、それから后王の警備要因をあげろ…!」

手近の男に、どっさり仕事を押し付けてサメラは開け放たれた窓を見つめた。サッシには砂がついている。中からの進入ではなさそうだ、じゃあどこからだと思考が鈍る。「考えろ、考えろ、落ち着け、それから考えろ」言い聞かせるような口振りで、サメラは薄暗い森を見渡した。見渡しても意味がないと判断を下し、床に崩れてる兵士を見てみる。
鼾をかいている様子を見ると、睡眠魔法か何か使われてるのだろうか。

「……閣下。王妃が。」
「……もっと」

もっと、自分があの時気付いていたら。肩を落としても視線は落とさず睨むように見つめていた。

「サメラ?」
「私がもっとしっかりしていれば。こんなことにならなかったのにな。私がもっと早く気づけばこんな現状にならなかったのに。」
「サメラ!」

肩を叩かれて我に帰り、ローザを見つめた。何か謝らなければと思考が走り言葉を探した。

「…………すまない、私が至らないばかりに。全て方がついたら……」
「馬鹿なことは言わないで、大丈夫なんでしょ?あの二人は。」
「大丈夫だと思う。」


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