「サメラはもっと酷いわよ、皺」
カインが、事故に巻き込まれたのは理解しているか?ローザ。赤き翼が出立してすぐだったそうだが、整備はシドだ。ミスがあると思うか?、それにだな。
「推測でしかないが、しばらくしない内に私に近衛兵長を辞任するような動きがでてくると思う。就任して直ぐだ、赤き翼がなければ近衛にすべてがかかる、私の手が回らないうちに材料を見つけ辞任の方向に持ってくるだろう。そうにしか考えられない。」
赤の他人が首をつっこむな、と言いたいのだろうが、こちらは片割れの影武者まで勤めているのはあまり知られない事実。
「そんな…!」
「事実だ。ただ、このまま待つだけでは遅いから、私は動く。待つだけが女の役目じゃない、時代は後から付いてくるのだ」
「でも」
「でも、じゃないローザ。もしかすると、次はセシルやローザ、セオドアにも毒牙が向くかもしれない。」
だから、理解は必要だ。言っていることが理解できたか?と問い直せば、ローザは素直に首を縦に振った。
「私は守りたいものの為に刃を奮うんだ。牙を向いた奴に牙を向け返すだけだ、心配するな」
サメラは言い切って、ローザの金を見つめるのであった。彼女の夫とはまた違う銀を携えて、静かに言葉を紡いでいく。
「生きてると信じてるから戦いたいんだ。」
「でも…」
「いいんだ、私たちの戦いだから。」
絶対に折れるか。とサメラは呟く。認めたくないから、サメラは下を向かない。下を向いてしまえば泣いてしまいそうで、泣けばカインが帰ってこないような気がして怖い。正直な気持ちを吐露して、サメラの気持ちが一気に下降する。
「早く動かないと、また誰か犠牲者をだす可能性がある。考えなければ、どうしようもない」
ローザ、私に手を貸してくれ。静かに言い切ると、ローザは静かに頭を縦に振る。
「私は何をすればいい?」
「帰ってきたらホーリーでもかけてやれ」
平然と口から冗談を飛ばしてみせれば、ローザがいつもの笑顔になる。よかった、と思い「よかった」と漏らす。
「やっと笑った。」
「そうかしら」
「眉間に皺よってたからな、癖になるぞ」
「サメラはもっと酷いわよ、皺」
「か。それはセシルに言ってくれ」
溜め息混じりで吐き出して、二人で顔を見合わせて笑う。
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