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「いや、そうして当然だ」

部屋向こうで、なんだか賑やかに聞こえる。きちんとセシルはローザに言ったんだなと、ぼんやり思う。セオドアはもう行った後だから、誰も止める人なんていないだろうと、思いながらサメラはため息を一つついた。それ以後、なにも聞こえなくなって、蝶番が泣いてセシルが顔を出した。

「サメラ、ごめん。」
「私は、お前たち夫婦喧嘩の仲裁はせんぞ?」
「ごめん。」
「…仕方ない、私はローザと一晩明かすから、今日は私の家を使え。お前たちついて行け。」

不満そうな部下に、セシルを任せて、サメラは非常時連絡の際、すぐに知らせろとだけ言って、緊急使用の笛を渡してセシル達を見送った。ため息ついて、サメラはノブを開けた。

「サメラ。」

泣き喚いた後なのか泣き腫らした瞼と赤い鼻が、ローザがどれだけ泣いたのかが伺えた。

「…カインが死んだのにサメラはどうして落ち着いていられるの?」
「どうしてって」
「カインが事故に巻き込まれたのに、サメラは…」
「ローザ、落ち着いてくれ」

声をかけてもローザの耳には届いていない。逆に、取り乱していくように見える。

「ローザ、カインは生きてる」
「嘘っ」
「落ち着いて、聞いてくれ。カインは事故に巻き込まれてから、別の場所で監禁されているに違いないそれがどこかもわからない、今必死になって情報を集めている。あの月に行ったのに、死んだと思うのか?」

落ち着かせる為に伸ばした手が、「触らないで」の声と共に払われる。やはり、私では役不足か。と落ち込んで、サメラはその手を見つめた。

「サメラ、違うの。」
「いや、そうして当然だ」

私は、ローザの夫でないからな、気に病むな。伸ばしかけた手を戻して、目を細めた。嫌な予感が走る。…セシル達に何もないといいんだけど。兵はつけてあるし、すぐに異変を察知できるように兵に笛を渡しているんだ問題ない。そう決めて、サメラはため息をまた一つ。

「全て話してやるから、セシルからどこまで聞いた?」

それからローザがパニックにならないように、物事を考えてセシルと口裏を合わせないと、なんて思考にはいる。

「あまり、覚えてないの。動揺しちゃって」
「なら仕方ない。最初から説明してやる、安心しろ」

そう口振りで、サメラは話を始めた。

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あきゅろす。
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