ゾットの塔の最上階。
飛空艇に乗り込むと、すぐに赤き翼がやって来て、タラップを繋ぐ。
「土のクリスタルは?」
「ここにある。」
嘘吐け。袋から落としたくせに。ふと漏らしながら、視線は前に戻す。
「さっきから、ブツブツ言ってどうしたんじゃ?」
「なんでもない。独り言だ。」
あながち間違いでない独り言だ。言っときながらしないのは、責任問題だ。
「ローザはどこだ?」
「フッ、そう慌てるな。俺の飛空艇についてこい。」
クルリと踵を返して、タラップの間だの板を抜き取る。シドが舵を取り、赤の飛空艇に着いて、空を駆けた。プロペラ音は一定に鳴り響き、しばらくすると、勝手に飛空艇が収納されて閉じ込められた。
「カイン!」
「どこへ隠れおった!」
「…そう慌てるな。ゴルベーザ様から一言お礼が言いたいそうだ」
「礼?」
「ゴルベーザ!」
約束を守ってもらって嬉しい限りだ。はやる気持ちも解るがまずは私の礼を受け取って欲しい。私は、君の愛しいローザと一緒にこのゾットの塔の最上階にいる。ここまでたどり着ければローザの命とクリスタルを交換してやろう。
低い声が、響いた。
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