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……そ…ら。

 サメラ…。

歪んだ視界が、綺麗に澄む。
真剣に名前を呼ぶ声が。

「……そ…ら。」

青い空。
雲なんか無い空。
違和感のある日常。

頭だけ高いのは、自分の荷物を枕にしてただけのこと。

「た、しか……。」

カイナッツォの津波にやられて。
記憶の引き出しを探しても見つからない。もそもそと体を起こすと、手元が陰る。

「起きよったか!!」
「……あなた、は?」
「ワシは飛空艇技師のシドじゃ。そこで待っとれ!セシル等を呼んでくるからな。」
「ありがとう、ございます。」

…元気な人だな。呆れながらも、辺りを見回した。幾数のプロペラがグルグル回ってそれで動く艇。
夢の艇。
夢を悪夢に変えた艇。

欲望の塊。
夢の果て。

人間の宿命に逆らった逆説。

「サメラ。」

呼ばれて、振り向けばそこに仲間がいて、こちらを見ている。

いつもある賑やかさがない。
ただ、重い沈黙が振る。

「…………セシル。」

聞くのが怖かった。
問うこと自体が恐ろしくて。
目が覚めた時に気づいたけれども。
聞くのが怖くて出来なかった。


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