「…嘘だがな。」
「風の音がする。地上は近い。」
サメラがそう言うと、双子の魔道師は耳を澄まして音を聞こうとする。
「それに、水の臭いが新しいモノになっているからな。」
というと、双子は臭いを嗅いだ。
「…嘘だがな。」
「姉ちゃん!」
「サメラさん」
双子は同じタイミングで、サメラの名を呼ぶ。
「だが、壁の隅で生きる雑草を見ると、どうやらよく、この水路には人が出入りしている形跡がある。バロン城は近い。」
水から足を抜いて、ポロムを地面に下ろすと、ポロムが礼を言う。
「別に、言われるほどの事はしてない。」
「いいえ、してくれましたわ。」
「……勝手に言え。」
ポロムはクスクス笑って、サメラの隣を歩く。
小さな手でも、少女らしさを表して。
…ローザを思い出した。
「……大丈夫、かな。」
「サメラ殿。」
「ううん、なんでもない。」
静かに首を振って、足元をみる。
足型に、色の違う土が視界にはいる。…少し、形の違うような人とは在らざるような。ぼんやりと考えていると、光が差し込んだ。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!