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足はあった。

扉の向こうでは、ファブールの僧がサメラの名を呼んでいる。セシル達は、何も知らない様に会話をしている。

幽 霊 か 。
混乱中でのサメラは其処に結論が向いた。考えれば考える程、鼓動が速まり、息苦しい。この年になって本物をみるなんて、思いもしなかった産まれてこの方十余年。二十弱が正しいかもしれないが…そういった類のモノを目にした事はない。昨日、一昨日に登った時のアンデットは勿論別だが。

「姉ちゃん!どうしたんだ?」

平然とした態度のパロムが、扉を隔てたサメラに声を掛ける。見えないのか。と、毒付いて、日頃の疲れが貯まったのかもな。思考を巡らす。

「サメラ、ヤンだよ。」
「…………サメラ殿ー」

セシルの声を塞ぎ、モンク僧がサメラの名を呼ぶ。確かに、よく聞けば、聞き覚えのある声が聞こえる。たらり、と冷や汗を一つかいてから、冷静に再び扉を開ける。今まで考えていた事は無駄だったのか、もしかして。

「ヤンが、バロンで洗脳されていたんだ。」
「かたじけない」

ヤンが頭を垂らしているのをサメラがチラリと見る。…良かった足はある。と妙に安堵するサメラがいる。

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あきゅろす。
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