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哀しみを雨にして。

再び、彼女が中央に帰って来たのは、ほんの数分前であった。先ほどと同じように、息絶えた人を背負って、先ほどと同じ様に作業をする。

「おやすみなさい。」

小さな声が、遠くまで響いた気がした。
そんな空気になられてか、少女が、黙祷を済ますまで、誰も言葉を発しない。聞こえるのは爆ぜる木の音。黙祷を済ませて、少女は立ち上がる。熱気に揺られて髪がなびく。

「ほっきょくのかぜ」

腰につけた袋が、小さな瓶を火の中に投げ込む、と大きな氷の塊が熱で溶けて、雨になる。

「……君は、」
「サメラ。…この町に帰ってくる途中、船が爆撃を落として行くのを見た。たぶん、バロンの飛空艇。」

だから、来た。というサメラ。

「細かい話は、ここじゃ出来ない。そんなに小さな子どもが、この環境の中に居るのは、風邪の元だ。」

せめてもの雨避けになればいいと、サメラはリディアの隣に屈み腰に巻いていた、上着を掛ける。

町外れに、テントを立てる。それからで、構わないか。そうサメラが聞く、一同はその言葉に肯定をした。

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