目を閉じて音を聞く。
目を閉じて音を聞く。木々の音の中に、遠く生き物の音が聞こえた。静かに槍を構え、長物の相棒を投げる。
カチャリ。今は聞こえない、懐かしい鉄の音が聞こえた。鎧が鉄と当たる独特の高い音だ。
空が勢いついて落ちてきた。
憧れて、恋い焦がれて、燃え上がるのを恐れて、手を伸ばせなかった。
大好きな――。
「そら…。」
メタリックブルーの兜は龍を模して作られている。竜騎士なんてそうそう居ない。私自身竜騎士の知り合いなんて一人しかいない。
「サメラっ。お前こんな…!」
カイン・ハイウインド。ただ一人。しかサメラは知らない。
「…久しぶりだな」
「久しぶりだな。じゃねー!お前なぁ、待ってろって」
「知ってる」
だから、捨てた。私の道には、いらないものだ。死にゆく女に不要な思い出さ。と溜め息混じりに零した。
「サメラ。」
「…血の匂いがする。怪我、したのか?」
「お前が投げてきたからな」
「すまない……。」
俯けば、頭に手が乗る。大きくてやはり努力の塊。
「手当てぐらいしてやる。必要なら来ればいい。」
踵を返して、来た道を帰りだす。
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