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あれから幾月が過ぎた。

あれから幾月が過ぎた。
セシルと出会い、仲間と別れ、長い時が過ぎたような気がするが、瞳を閉じればすぐにあの楽しい毎日が思い出す。
短くて長い楽しかった毎日は、サメラの記憶の中で美化され汚れず続くだろう。サメラは静かに瞳を伏せて、息を静かに吸って、清々しい朝を迎えたのである。

「ここに来てしばらく。」

伏せた瞳が前を捉えた。延々と続く木々を見つめてサメラは切り株に腰を下ろした。

「見つかるような気配はない。やはり、知り合いのいないトロイアに来て正解のようだな。」

胸を撫で下ろせば、体中を火が走るような感覚に襲われ、胸元を一直線に駆け上がる血が口から溢れた。死にそうで死なない体に苛立ちながら、サメラは舌打ちをする。

「……っ。」

大きく息を吸って、自分に落ち着けと言い聞かす。吸って、吸って、吸って、吸って、吸って、吸って、吸って、吸って、吐けよ。そろそろ。なんて一人突っ込み。

「仕方ない、狩りに行くか。」

長物の新たな相棒を手にして、サメラは森の中に足を踏み込んでいった。

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あきゅろす。
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