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「さようなら、だいすきなひとたちよ。」
「……とりあえずっ、待つのは三分だけだからな」

視線を下げれば表情は伺われない。
多分、この顔は多分赤いのだろう。とすぐに思えた。すぐさまにカインは分かったと言って踵を返して魔導船の中に入っていった。その姿は見えない。

それから、二分もしないうちにカインは帰ってきた。そこには小さな足跡が一つ森の方向に伸びているだけであり、そこで待ているといった少女はいない。

「あいつっ。」

苦虫を潰したような表情を浮かべたカインはその足跡を追いかけって行った。

「行くか。」

この旅に誰もいらない。
居られたら掴んでしまう。
生の縁を。
生きる理由を。確かに、あることはある。だけれども、彼は彼で、私は私だ。

「さようなら、だいすきなひとたちよ。」


あいしてるよ、みんな。
小さくつぶやいた声は、どこにも届くことなく、夜の闇の中に消えた。足跡と赤を残して少女は消えたのだ。
この世界から、少女の形だけを切り取って。

夜の闇はその型を埋めるように、そこに闇を置いて行った。


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あきゅろす。
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