そして、膝詰めの説教が始まった。
「……セシルは。」
悲しくないのか。
苦しくないのか。
回された手に力が入る。痛々しさが伝わる。いつもの力強さが、手の温もりが今はない。
「サメラ。」
そこで、セシルは、鼻につく異臭に気がついた。鉄臭さを持つ独特の匂いを知っている。腕を放せば、先程の力強さは嘘の様に離れた。
「サメラ。」
「大、丈夫。」
「どこが大丈夫なんて言えるのサメラ。」
「すぐに収まるから。へいき。」
「サメラの平気はあてにしてないから。」
ほら、ベッドに戻って寝てて。いつもより強めに言われるとサメラは言い返すことが出来ずに言われたとおり横になる。
「ローザ、呼んでくるからね。」
「ああ、分かった。ケアル!」
「分かってないよね。ケアルって外傷にしか効かないのわかってるよね」
「病は気からって…」
「サメラのは内傷!。」
「あ、うぐっ。」
そして、膝詰めの説教が始まったのは今までの経験上安易に想像出来上がったのである。
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