思い返せば短く、話せば長い道のりだ。
「サメラ、寝てるの?」
優しいセシルの降りかかる声をも無視してサメラは寝息を立てた。昔リディアが言っていた眉間に皺を買い寝る姿など今の風貌からは見当たらない。見つからない。
「……むにゃ。」
寝言を言う姿は、年相応以下にも見えてリディアと同じぐらいにも見えた。
「サメラ?」
「うにゅ。」
寝言なんて言ってる事なんて無かったのに。ファブール、ミシディア、バロン、トロイア、アガルト、地底、エブラーナ、月、バブイル、月の遺跡。
思い返せば短く、話せば長い道のりだ。
「ほんと、長かったよね。」
「そうだな」
「起きたの?」
「声が聞こえた。」
しれっと答えながらサメラは小さく息づいた。
「寒い?」
「いや、まったく。」
「顔、青いよ」
「お前もだろ、いつも唇が紫の癖に。」
「その癖に。ってなんかムカつく」
「…ふふっ」
あ、笑った。なんて思って少しビックリした。サメラが笑うなんて。ほんの少し放心していると、サメラの腕の中に引き込まれた
「セシル。」
「うわ、サメラお酒飲んだでしょ」
「んーんー」
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