逃げるならそこでだ。
ゴルベーザとフースーヤは月の奥深くに眠りに行った。見えなくなるまで見送り、見えなくなってもサメラはその方角をみていた。
これで良かったのだろうか。と自分自身に問いてみた。答えは見つからないままだ。
「サメラってば。聞いてる?」
「…へ?」
ぽちゃり。と熱いスープ皿の中に具材が落ちて出し汁がはねて、サメラの腕にあたる。
「あつ…。」
「サメラったら元気ないわね。どうしたの」
「いや、なんでもない。」
ふるふると首を振り、視線を上げた。閉鎖的な空間にサメラはいた。いつの間にか大きな月の遺跡を抜け出して魔導船についたみたいだ。
「疲れてたんじゃないの。」
「…かもな」
小さく呟いてため息一つ。
少し寝ると言付けて、サメラは端で、横になる。胸元で広がる赤を適当にもみ消して一人考えにふける。
これからは、どうするんだ。
何も受け付けない体で、
赤しか吐かない体で、
バレたら怒られるな。と考えて唇を歪ませた。
なら逃げるか。
何度も悩んだ末の答えだった。
ミシディアで1日滞在するみたいな予定は聞いた。逃げるならそこでだ。
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