「……今、隠さなかったか?」
目が覚めれば、そこは仲間に囲まれて五対の瞳がサメラを見ていた。
「サメラ?」
「ど、した。リディア」
「なんでもないよ」
ズキズキと、頭が警報をこれでもか。と言うぐらい鳴らしている。セシルに視線を向ければサメラの愛用鍋シリーズの一つ、煮物鍋がそっと隠された。
「……今、隠さなかったか?」
「ううん、なんでもないよ?」
「なぜ語尾が疑問符になる。」
「気のせいだってば。」
アハハハと、セシルが空笑いを浮かべる。
「なんとなく覚えてるから、何も言わなくていい。」
「サメラ、大丈夫?」
「あぁ。」
青の目には、静けさが宿りいつもの瞳が見える。あの目は、初めて会ったときのような目。すべてを諦めきった静かな炎が燃やされている。
「気を引きつけておくから、体調を万全にしとけよ。」
「サメラ…?」
セシルが伸ばした手を、すり抜けてからサメラは大きな跳躍を果たした。
「さぁ、こいゼロムス。先端導者ルドルフ参る。」
インシデントソルジャーを柔らかな印象のある刀に変えて、ゆるやかに笑った。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!