ゆらりと立つ女。
ゆらりと立つ女。
息を切らせる男が三人。
それは、端から見ても不思議な光景であった。黒、闇の力を使い、一気に男達と女の距離を詰めた。
「…っ。サメラ。」
迫り来る攻撃を槍で受け流しながら、カインはサメラを呼んだ。だが、答えはない。彼女の青に光は見えない。周りを伺えども困惑が合間見える。
「……倒スよ。」
綺麗な声で囀る声はいつもと変わらない。ただ、ほんの少し暗い。この目で裏切りを見たのは初めてだ。前までは裏切る側に立ち、物事を見ていたが操られる、裏切られる、を見たのは初めてだ。
裏切られるとただ、辛くて悲しい。それを何度目味合わせていたのなら、いたたまれなくなる。
カインと幾らか刃を交えたサメラは、一端距離を置いて次はセシルに切りかかろうとした。
「サメラ?」
とても綺麗に笑う親友は、ニッコリと笑い自分の兄弟の名を呼んだ。この笑みは曰わく有り気な笑みで、カインはその笑みは親友が怒っている笑みだと知っている。
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