壊すだけだ。
「サメラ?」
「ん、どうしたリディア」
その瞳にある青は酷く悲しげにリディアの目に映った。それは何を恐れてなのか、何を杞憂してなのか、何を思い出してなのか解らない。
「ねえ、あれ見て!」
ローザが示した先は、火柱立つ闇。
その先にゴルベーザがいると思えば、急ぐ足場尚も忙しなく動く。
……るど、るふ。
る、るふ…せ
だけども、頭の中で鳴り響く声は尚一層増すばかりで止まる事を知らない。サメラは静かに首を振って一番後ろを走り出す。
呼ぶ声は止まる事を知らずして、静かに勢いを増していくのである。
「ルドルフ先に行くぜ。早く来いよ」
「あ、あぁ。今行く」
静かに目を伏せて、サメラは仲間の背を見送った。吐き出す鉄の味などどうでもいい。
「今はただ―――」
壊すだけだ。
頭の中で静かに響く声を追い出せども未だに響く。止まる事を知らない響く声は静かに、サメラを飲み込んでいくのである。
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