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「私は……仲間と被災者の幸福を。」

張り詰めた空気が沈黙を作り出した。目指す先は、ただひとつ。最奥に潜む闇、ゼムスのみ。

痛いほど静かに聞こえる音は、自分たちの足音。戦う前の独特な緊張感があたりに蔓延る中でサメラがポツリと一言を漏らした。

「……幸せになる事を考えろ。」

これは団長の教え。
戦いのあとの目標を作れば、人はどうにかしてでも生きる。とんでもない事ばかり言う団長が初めて教えてくれた事だ。毎回戦ばかりに出る度に私はちいさく祈るのである。

仲間達の幸せを願う。
そして、自分は添え物のように、あっても無くてもどちらでもいい。
彼らの幸せが私にとっての最大の幸せなのだから。

「サメラは何を願うの?」

ふいにかけられた声に気付くと全ての視線はサメラに集まるのが気付いた。話題は今し方漏らした願い。の話である。

「私は……仲間と被災者の幸福を。」
「サメラらしいね。」

幸せを決めるのは私ではない。その人だ。人が幸せになるのなら、私達は芸の道を歩くのである。

無から有を。人から幸を作り出すのが三番目の奇術師-Maniac Replica-の特技なのさ。昔、かすかに笑う団長の横顔を思い出した。

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