「…キミノセイダヨ。」
「我を呼べ、月の民の血を持つ女。」
夢の世界は鮮やかに色を変える。
目の前にあるのは、倒れた銀と立ち尽くす青と白。そして世界が急速に色を無くす。
倒れた銀。
見覚えのある細い線は、今では毎日見ている姿。
見覚えのある部屋は、まごうことなくバロン。
「セシル、カイン、ローザ?」
名前を呼べば、か細く震えていた。名前を舌に乗せると、なんだか安心した。
だけれど、目の前の状況が変わるわけでもない。
「サメラ……。」
銀が私の名を呼んで、手を伸ばす。細くしなやかな腕が私を掴もうとしている。
「…キミノセイダヨ。」
いつもでないセシルの声。低くて暗い声色は、恐怖に値するものであった。
そこで、開けた有彩色の景色に胸をなで下ろした。
「夢、か。」
「起きていたのか。」
頭上から降りかかる声を確認すればニヒルに笑う蒼がいた。
「夢を見た。」
「そうか。」
「なぁ、カイン。この遺跡はあと何回ぐらいだろうか。」
「あと二つか三つぐらいだと思うんだが。」
会話が消える、沈黙が降って気まずい空気が流れた
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