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じゃなくて、折れてるんです。解れ。

口から吐き出される血も、なにもかも関係がないくらいに、サメラは眠りの世界に扉を叩きかけているのだが、呼ぶ声が聞こえる。仲間の声が聞こえているのだが、睡眠欲には抗えばしない。

「お休み」
「お休み。じゃないよ」
「いーっ!」

右手の痛覚が異常を訴える。痛さで目が覚めた。

「あ、起きた?」

起きた。じゃないよ、片割れ。
折れた骨用に簡易ギブスの氷を簡単に砕いて触ってないで。痛いから。
…真っ黒笑顔で笑うセシルから視線を逸らして、起きた起きたと適当に交わす。

「サメラ、折れてるんじゃない?」

折れてるんじゃない?じゃなくて、折れてるんです。解れ。

「サメラ、無茶しないでよ」
「頑張ってるんだけどな」
「僕も痛いんだから」

苦笑すると片翼も同じように笑う。リンクする意志、怪我の痛さも幾分か伝わるのだろう。適当に腕に魔法をかければ、途端に噎せ込む。
口の中に広がる鉄の味に、サメラは小さく眉を潜めて、溢れた血を無理やり拭った。

「サメラ、あの。」
「どうしたんだセシル。」

視線を重ねれば、セシルの視線が逃げた。それほど言いにくかったものがあったのだろうか。

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