かつて自分が背負った黒。
「しまっ…」
理解した頃には、黒の杖が肩を貫いた。鮮やかな赤が、空に舞った。途端に、囲んでいた炎が勢いを無くして、仲間が見えた。驚く様子が伺えるし、叫ばんとしている表情も見える。
「趣味、悪いな。マラコーダ」
「ハン、なんのことだかな。」
「……なんか、あったまにきた。」
ゆるゆると肩に刺さる異物を抜き取って、鈍い頭を奮い立たせた。目の前の敵と戦わなければならないんだ。意識を切り替えて、マラコーダを睨みつけた。
「絶対に、負けるか。」
そう放ち、一気に距離を詰め寄って、サメラは奇襲を仕掛けた。無くなる距離に比例して勢いは増すばかり。一撃喰らわせて、サメラは一旦距離を置いて唱えた。
「三番目の奇術師-Maniac Replica-、戦端闘者、サメラ・ルドルフ、戦場を翔る。」
赤の世界に有る銀は、悠然とそこに立つ。
その背中に、黒の陽炎を揺らめかせて、サメラは相棒の姿を変えた。
その黒の陽炎に、仲間達は思いあたりはある。
「セシル。あれ…」
「ああ、確かに。」
視線の先に、ある影はかつて自分が背負った黒。
「暗黒だ。」
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