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いつの間にか出来た恐怖心。

遺跡の中の空洞に光が差し込んで、そこに砂が乱反射してキラキラ舞う中で、サメラは足を動かして、砂埃を舞わす。これは一種の賭けに近かった。
砂埃の中で垣間見えるマラコーダに焦点を合わせて、走った。

「そこだ!」

風を切り裂いて走る雷光を間一髪で交わして、狙うのは…。
「背後!」
インシデントソルジャーから肉を断つ感覚が伝わる。力を込めて抜けば、赤が散るのが見えた。

「焔牢!」

炎が地に円を描いて、視界を遮る。視界に広がる赤で産まれるのは恐怖だった。

「…っ!」

いつの間にか出来た恐怖心。
…恐怖心を破るために必要な大きな勇気。ただ知らずのうちに右手が震えていた。

「サメラ!」
「……っ。怖くない。インシデントソルジャー。」

あと少しで終わらせるから。
緩やかな曲線を握り締めて、サメラは炎の中を走る。オレンジが揺らめく中で、サメラは黒を見つけた。

「マラコーダ、覚悟!」

インシデントソルジャーが貫いたのは、黒の布切れ。とっさの判断でインシデントソルジャーを抜けば、そこにしてやったりの笑みを浮かべる仮面が一つ。
不気味に闇の中で蠢いた。

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