「サメラちゃーん。おーきーてー!」
鉄の鎧の冷たさが、頭の芯を冷やす。そこだけ、冷たい水が走るような感覚、体の中を走る。
賑やかなのが聞こえる。確認するのも、億劫になって、再び意識を沈もうとさせる。
「サメラちゃーん。おーきーてー!」
のし掛かる重さがぐっと加わる。悪意のないまっすぐな声に、聞き覚えがある。
眼をこすり、目を開けばそこに見知った顔がいた。だけど、もう会えない筈なのに。
「ダンサー?」
「なぁに?サメラちゃん」
燃えるような赤い髪を揺らして、黒がサメラをニッコリと見つめる。
「サメラちゃん、すっごく寝てたから、ヴィクセンさんがね、寝かしてあげなさい。って!」
「そうか。」
今まで、何をしていた?確か、……何を誰としていた?。霧がかる思考を振り払い、サメラは視線を動かす。
「サメラちゃーん、結って!」
髪紐を握らされる。毎朝の日課となっていたダンサーの髪結いも手速に済ませて、考えてみる。
さっきまでのは、夢か?自分に問いかけれども答えは見つからず。
「サメラ、ご飯できてるよー。」
「そうか、じゃあ行くか。」
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!