[携帯モード] [URL送信]
「サメラちゃーん。おーきーてー!」

鉄の鎧の冷たさが、頭の芯を冷やす。そこだけ、冷たい水が走るような感覚、体の中を走る。

賑やかなのが聞こえる。確認するのも、億劫になって、再び意識を沈もうとさせる。

「サメラちゃーん。おーきーてー!」

のし掛かる重さがぐっと加わる。悪意のないまっすぐな声に、聞き覚えがある。
眼をこすり、目を開けばそこに見知った顔がいた。だけど、もう会えない筈なのに。

「ダンサー?」
「なぁに?サメラちゃん」

燃えるような赤い髪を揺らして、黒がサメラをニッコリと見つめる。

「サメラちゃん、すっごく寝てたから、ヴィクセンさんがね、寝かしてあげなさい。って!」
「そうか。」

今まで、何をしていた?確か、……何を誰としていた?。霧がかる思考を振り払い、サメラは視線を動かす。

「サメラちゃーん、結って!」

髪紐を握らされる。毎朝の日課となっていたダンサーの髪結いも手速に済ませて、考えてみる。
さっきまでのは、夢か?自分に問いかけれども答えは見つからず。

「サメラ、ご飯できてるよー。」
「そうか、じゃあ行くか。」

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!