「鉄の冷たさが、いい。」
「でも、急がないと、いけない旅、だろう?。」
「…そうね。ならこうしましょ。」
ふいにローザが笑って指を一本立てた。提案は一つ。とても分かりやすいものだった。
サメラが休んだ分、後でいっぱい急ぎましょ。それならいいでしょ。サメラは落ち着くし、私達はゆっくり休めるし。ね。いいでしょ。と、言い切ると、サメラが水呑み鳥のように首を振る。
「じゃあ、私達はご飯の準備するわね。」
安静にしとくのよ。と念を押されて、再度サメラは首を縦に振ると、横になる。
なんだかんだ言って、車座が解かれる。サメラは纏まらない頭で考えながら眺めて、心地よい冷たさが触れる。冷たさを感じながら、目を閉じる。目の前の男――即ち、カインに、名前を呼ばれたかので、キッチリ目を開けて答える。
「おい、氷いるか?」
「鉄の冷たさが、いい。」
「そうか。」
目を閉じて、安息。
サメラは、安らかに寝息を立て始めた頃に、コテージの中にリディアが飛び込んできた。
「氷作ったよー。…って、なにしてるの?カイン。」
そう聞かれてカインはしどろもどろ狼狽えた。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!