「さぶーん。」
ため息をついて、カインは頭を抱えた。
目の前の女は、常日頃から鉄の女をしている。そして酒が入れば、どうなるか解らない未知数を示している。
「……カイン」
「酔っ払ってるだろ。」
「酔ってない。」
即答する割には目が眠たげな表情をしているのが、わかった。
「眠たいだろう。」
「眠たくない。」
とかいいつつ、目は虚ろだ。…この意地っ張りは兄弟して譲り受けているのか。そう考えると頭が痛くなる。
「さぶーん。」
不思議な効果音と共に、サメラがカインの膝の上に頭を乗せる。
「おい、サメラ。」
「……」
「おい、聞いてるのか?」
そっと顔をのぞき込むと、静かに船を漕いでいる。……人騒がせな奴だ。
カインはもう一度ため息をついて、頭を抱えてから、まじまじと膝の上で眠る熱を見た。
風と共になびく銀糸。
閉じられた中に潜む静かな青。
片割れと違えぬ家の情報。
似ている癖に似てない背丈。
それから、小さな体から弾け飛ぶような勢いがどこからできるのだろうか。
カインの疑問は、ふつふつと湧いて、留まる事を知らない。
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