やっと見つけた一つの家族なんだ。やっと見つけた一つの幸せなんだ。
ふいに、耳が音を拾って、意識がそちらに向いた。
「ローザとリディアとサメラは残るんだ。僕ら三人だけで行く。今度ばかりは生きて帰れる保障は無い!」
脳天に衝撃が走った。くらくらとして、視点が定まらない。こころなしか、息苦しくもなるような気がする。
「セシル!」
「そんな!」
「さあ魔導船を下りるんだ!」
「……」
「そういうこと、ガキはいい子でお留守番だ。」
「バカッ!」
リディアとローザが船を降りた。きっと彼女らの事だからどこかで身を隠しているんだろう。……絶対に折れてなんかやるか。
「……ヘッ。」
「セシル…」
「サメラ、ほら、降りて。」
「お前ら、死ぬつもりなんだろうが。」
そんなの私が許す訳ないだろう。わかっていて言うと思っているのか?お前たちが全力でそういうなら、私はそれを全力で応えてやろうじゃないか。でもな、セシル。
「やっと見つけた家族なんだ。やっと見つけた一つの幸せなんだ。だから、簡単に居なくならないでくれ。」
「…仕方ないなぁ。行くぞ、カイン! エッジ!サメラ!」
小さく頷いたサメラは、窓の外を眺めた。緑と白は見えなかった。
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