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痛覚だけが、素早く反応する。

ふいに、血の匂いが、鼻についた。
振り返った時には、もう全てが終わっていた。
足元で静かに血溜まりの池が、少しずつ浸食していく。

ごめんなさい。
それから、ありがとう。

一言礼を言って、目を閉じて手を合わした。敵は討てたし、カタもこれでついた。泣くわけにいかないから、静かに目線を落として、追悼をしてから踵を返した。

刹那、青白く細い光が胸を射た。突然すぎて、なにも感じない。
空いた穴から、赤が零れ出て、鎧をつたう。感覚的に言えば、弓で射られたような感覚だった。中心を抑えられ、身動きの出来ない標本が、頭の中でふと思い出した。

ぼたり、ぼたり、と口からも赤が出る。口腔内に、血の匂いが籠もって噎せ返る。瞬間刹那、ただ短い時が長く感じられた。痛覚だけが、素早く反応する。

光が止むと、吸い込まれるかのように、自分が作った血溜まりの池に崩れ落ちた。
ばしゃり。水音と共に、鉄臭さが尚一層強まった。消えゆく意識の中で、遠くだれかが名前を呼んだ気がした。誰かは、確認出来てない。

前も見えない、暗闇にサメラは意識を放り込んで、目を閉じた。

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