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ただ、ひとつ。

切り崩した土の中から、久しぶりの空が見えた。青の空と熱い太陽で目が焼ける気がする。

「久々の空ね。」
「ミシディアに急ごう。魔導船の話を聞きに。」

空を裂くプロペラ音は、猛々しく音を立てた。



同時刻。
サメラ・ルドルフは祈りの塔に居た。
静かに、何かを待つように。
細く長い銀糸を垂らして、静かに祈る。
ただ、ひっそりと祈っていた。

祈る事はただ、ひとつ。
仲間の無事。

日が何日沈もうが。
月が何日登ろうが。
サメラには関係ない。こう、祈るしか手だてがないのだから。

静かに瞳を閉じて祈る中、懐かしい飛空挺の音がした。あれはエブラーナに置いてある。来るはずがない。一人完結つけて、祈る事に集中する。
静かに首を振って、意識を切り替えた。


「サメラ。」
「長老、何か。」
「お主が来て、幾日過ぎた。その間、なにも口にしてない。」
「否、セシル達が無事と解るまでは、祈らせて欲しい、」

瞳を伏せて、言葉を濁す。サメラと長老の間に、黒魔導師が割り込んだ。

「長老、セシル達が!」

その一報を聞いて涙が出そうになった。嬉しくて、生きていてくれてありがとう片割れ。

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