光の中に消えていく。
「カイン!」
蒼銀が、光の中に消えていく。
最後の闇のクリスタルを手に。
「カイン!」
セシルの呼び声も聞かずに、月色の髪に風を纏わせて影を消えた。光の先に、小さな石ころが影を作っている。
「ゴルベーザの術が完全に消えてなかったのね。」
「そうみたいだね。」
「……ルドルフが怒るな。あいつ、人の存命については細かいから」
ポツリとエッジが漏らした。予想した先に、怒るか泣くか。二パターンがすぐに浮かび上がった。
「とにかく、ジオット王の所に行こう。」
「そうね、そうしましょう。」
小さく交わされる会話に耳を傾けたリディアは、その中である、しずかな沈黙は、ただ苦痛でしかなかった。
どうにかしたい。けど、どうにも出来ない自分が嫌だった。
「その後に、僕らも月に行く方法を探そう。サメラを助けに、カインを救いに。」
セシルは自分で言ったことに、小さく頷いて、胸一杯に空気を吸った。微かな血の匂いに、誰にも気付かれず眉をひそめた。
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