全滅しそうだね。
…カイン。
名前を呼ばれた気がして、振り向いた。だけれども、そこには誰もいない。
逸れた先にリディアがいるくらいだ。視線に気付いて、リディアが声をかける。
「どうかしたの?」
「なんでもない。」
最後のクリスタルは、死守しないとな。ぼんやりと考えて視線を自分より上に位置するプロペラに目を向けた。
「不要なモノを売らないと駄目だね。」
「確かにな」
「それから、ポーション系統買い足さないと。」
不要なモノは、荷物になる。
必要なモノは、多い位買え。
金額交渉は、サメラの仕事、細々とした、否、しすぎる仕事は彼女がいつもしていた。
「ほんと、サメラが居なきゃ。全滅しそうだね。」
これから先を思うとカインの背筋が冷えた。三食の準備、金銭的な管理、思いつく限りを上げればキリがない。
とりあえず、カインはため息をついた。
彼の名を呼ぶ声は、終わらない。
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