どんな時でも笑いなさい。
「………リディア、カイン!聞こえているなら早く逃げろ!」
悲痛な声が、耳から離れない。
きっとあの時もアイツは泣いてたんだろうな。
初めて会った時のように。
泣きそうな顔をして、俺を見ていた。
深い意識の中で、眺めてたから、ハッキリと解る。
二回目もそうだった。
記憶を大事そうに抱えて、泣いてた女。
小さな子供の絵を、肌身離さず持っていたのが解る。
「カイン。もしかして、サメラの事考えた?」
リディアが隣に来て、そう言葉を放つ。
図星をつかれて少し驚いた。
「なんとなく解る。そんな顔をしてたから」
「………リディア!」
サメラみたい!と指を指してリディアが、ケタケタと笑う。
きゃー、怖い!とか、言いながらも声色は楽しげだ。
「サメラが言ってたんだ、どんな時でも笑いなさい。って。」
ファブールでご飯食べた時に言ってたんだ。辛い事があっても、泣いたらいい。でも必ず、泣いた分だけ笑いなさい。って。
言った意味合いを理解した。ローザを拐って行った時だ。居なくなった人を思うからこそ、子どもでも対等に大人として扱うのだ、彼女は。
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