空と陸。
その後、どうなったかも覚えてない。
無我夢中に言葉を叫んだような。
無意識に魔法を使ったような。
瞳から、静かに涙を流したような。
何も覚えてない。
仲間が落ちて、数刻、なんにも。
ふと気がついたときには、機械仕掛けの部屋に、自分一人。
セシル達は無事なのだろうか。
覚えている限り、真っ暗な穴だった。
底なんて解らなかった程。
人が落ちた。
その距離が長ければ長いほど、死が近くなる。
時を刻むように定期的に音がなり、耳が拾う。
…なんにも考えたくない。
気が狂いそうな、長い時間がたったような気がした。
解らない、変化を与えない時間に腹ただしい。
双子共有の特異な共通点はない。
きっと無事。きっと無事。きっと無事。きっと無事。
自己暗示のように繰り返す言葉。
願い願って、小さな窓の外を眺める。
脱出も無理な程の小さな窓。
飾り窓のような、採光のような印象を受ける窓。
その先には、空と陸。
飛ぶ鳥と走る獣。
沈む夕日、燃える空。
登る二つの月、静かな夜。
見覚えあるような銀は、多分きっとエブラーナ。
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