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風が通り過ぎた。

エッジの耳元を風が通り過ぎた。
下から上に吹き抜けていく風が、妙に心地よくて、静かに瞳を閉じた。

「……あいつら!」

風と共に抜けてきたのは、以前に二三会ったことのある名もない旅の集団の中の一人。

白銀を持って、静かな炎を燃やす人間。
強青を持って、確かな意思を持つ人間。
珍しさゆえに、声をかけた。
ソレが最初の接触。

「ルドルフ?」

脳裏にあるのは、見た目よりも大人びた姿、隣に並ぶ自分自身が幼く見えるような、印象を与える人。

耳を澄ませば、もう一度懐かしい声が聞こえる気がして、エッジは音を探した。

「なにしてるのよ、」
「いんや、昔の知り合いの声が聞こえたみたいだからよ…気のせいか」
「当たり前でしょ。こんなところに知り合いなんて。」

遠くで、鉄橋を渡る音が聞こえたような気がした。こんな場所に旅の集団なんかいないのは知っている。

「元気でやってんかなぁ。アイツ」
「元気でやってるわよ。大丈夫よ。」
「だよな。強いもんな、アイツ。」

俺の喧嘩の師匠だかんな、負ける訳ねえ。
エッジは心の中でつぶやいた。

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