また、優しい人が消えてしまった。
「だからアナタに大人しく捕まって貰おうかと」
「……嫌だ。」
サメラが言い切るとマラコーダの武器が振り下ろされた。サラリと横に避けて、吹き抜けのような穴に飛び入る。
「三十六計、逃げるが勝ち」
予定の目星はついてない、戦えない今だからこそ逃げ切る必要がある。重力に従い深く深く下に落ちる。しばらく落ちると灯りと共に床が見えて、上手く着地をすると甲冑の堅い鉄の音がなる。
「目指すは下だな」
荷物の半分近くを先程の階に置いてきてしまった。ポーション、エーテル、フェニックスの尾は無いに近いとも言える数だ。
仕方ないと諦めながら、サメラは耳を澄ませた
「こっちから音がしたんだってば。」
「本当にか?」
「サメラ!」
角の向こうから、いつものメンバーが集まって、ガヤガヤと賑やかな音に静寂を与えた。
「ヤンは…?」
「巨大砲の……」
その一言で、理解した。また、優しい人が消えてしまった。
「……また、か。」
この戦いは、本当に……!
歯を食いしばり、耐えなければ耐えなければ。と追唱する。
「この塔にマラコーダがいる。早く脱出をしよう。」
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