赤い海を飛び越えて。
荒れた地を蹴り、小さな赤い水たまりを飛び越える。飛ぶ勢いで目的のものを見つけて、飛び込んだ。
瞬く間に仕留め獲物はモノ言わぬ屍になり、食用の処理をしてからサメラは何事もなかったように息をついた。血の赤が大刀に、こびりついている。また放っていれば刀は痛み使えなくなるな。と頭の隅で思った。
狩った獲物の首を掴み。周りを確認するために、耳を澄ます、魔物の音も獣の音もない。聞こえるのは、静かに茹だる程熱げな赤い海が鳴らすバチャバチャと自分がつくる音だけだ。
「……バチャバチャ?」
音の根元を捜すために、振り返る。赤い海がこぼこぼと泡立ち揺れる。サメラは真剣に見つめて今し方収めた大刀を抜いた。
「…………」
そっと覗き込んで、青がきつくなった。
睨みを聞かせていると、泡は収まって何も現れない。
「気のせいか。」
そう結論付け、サメラは仕留めた獲物を手に元来た道を歩きだした。
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