サメラ・ルドルフは混乱していた。
サメラ・ルドルフは混乱していた。まるでバロンでモンク僧長のヤンに出会った時のように。
「……あぅ。」
「どうしたの、サメラ」
「いや、あ……の」
その右手に見えるファイラ締まってくれませんかね。なんて言えない。口が裂けでも言えない。長年キャラバンで鍛え上げた感がそう告げる。
避ける事も出来るのだが、避ければ後々何か飛んでくるのは昔に学習している。すっかり怯えてサメラは正座をして、膝に拳を置いて視線が泳ぐ。遠くの方で仲間達はしっかりキャラバンに紛れて晩飯を掻き込んでいるのが伺える。
「どうして出て言ったの?」
「……故郷が、近かったから。」
「故郷が近いんなら勝手に出て行ってもいいの?」
「……確か、出ていく。って言ったんだg「黙らっしゃい。」」
言葉を放てば、遮られ。
素直に聞けば、威圧感。
…どうして、団長はこんな面倒な嫁を貰ったんだろうか。これは昔からの疑問だ。
「ヴィクセン、そろそろサメラを離してやれや。飽いてくるだろ。」
「ランサーさん…」
ランサーとヴィクセンの間でどちらを見ていいのか解らずに狼狽したが、すぐさま二人の下から離れた。
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