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「薬師、か。」

「すまない、お前を見てるとセシルを見てるみたいでな。」
「そこまで似てないし、似てると考えた事はない。」

勢いよくカインから紙を奪い返して、手早くローブの中にしまいこんだ。

「似てるな。」
「似てはない。」
「そういうムキになる反応もだ。」
「…………」
「その後の沈黙も、な。」

完全に図星なのか、サメラは顔を赤らめて、ぷい。と視線を反らして髪を払い除けてから。「失礼する。」と言葉を放ち、くるり。と踵を返して、サメラは夜の帳に消えていった。

「薬師、か。」

風貌に似合わないなんて感想を持ちながら、カインは足早に自室るために足を急めた。

初めて会ったときは、敵同士で厳しい視線が気になった。
二回目は、静かに燃える炎のような印象を受けた。
三度目になって言葉を交えてみたら、不思議な人間ときた。

「変な奴。」

カインがぽつりと呟いたが、夜の城の中で誰の耳にも届かず消えた。

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