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ジョーノC
ばたばたと遠ざかる小さな足音。
それを追いかけるようにまだかん高く幼い声が叫ぶ。
「ざまあみなさい!! おとといきやがれ!!」
「覚えてろよ! ばかトト!!」
そう返しながら走ってゆく少年たち。
その背中が遠ざかるのを見送ってトトは背後にしりもちをついていた幼なじみを振り返った。
右手に木の棒を握りしめ、顔を土で汚した彼女とは反対に、涙の滲んだ瞳で今にも泣き出しそうな顔をしている少年。
そんな彼を見下ろして、トトは口を開く。
「なにやってるのよ、ジョーノ! ばっかじやない!」
心配の言葉など望めない事は最初から解ってはいたが、予想に違わぬその言葉に、ジョーノは目を擦った。
「ばかじゃないよ!! トトこそ、女のくせに男みたいじゃないか!!」
「子分がえらそうなこと言うなっ!!」
泣いていると思われたくなくて言い返したのに、なぜかトトは小さな手でジョーノの頭を叩く。
「な、なにすんだよぅっ!」
叩かれた頭を押さえると、引っ込んだ涙が、またじわりと出てきた。
「子分なのになまいきなジョーノがわるいんでしょ。…なくなっ!!」
私が悪いみたいでしょ、と腕を組むトトを見上げ、実際、本当に悪いのはトトなんじゃないかと思いながらジョーノはまた目を擦る。
「ないてないよっ!!」
「うそつけっ!! どろぼうのはじまりだよ!?」
大きな声で言えば、さらに大きな声で怒鳴り返されてジョーノはびくりと肩をすぼめた。
幼心に、また叩かれるのかと思いぎゅっと目を瞑る。
痛いのは、嫌なのに。
しかし、予想したようた痛みは無く。
代わりにトトの声が降ってきた。

「男のくせにみっともないから、はやくたてば?」
その言葉にそっと目を開ければ、目の前にトトの手があって。
こっちを見る赤い瞳を見上げると、ひどく彼女が頼もしい存在に思えた。
「あ、ありがと…」
差し出された手を取り立ち上がりながら、ジョーノは決意した。
いつか、彼女のように頼もしい男になってやる、と。

きみのように、

だれかをまもれるひとに、

なりたい。


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