構ってちゃんと構って
※!:
(軽い閲覧注意報。浮気性魔理沙に捨てられた二人の話。アリスがSっぽいです。)



●○●



例えば、あなたならどうする?
好きな人が別の女を連れてきて、私とその女を残して何処かへ行ってしまったら。
私はどうしてよいか分からないから、誰に聞けば答えが返ってくるのだろうかと考えてみるけど一向に解決しない。
それは今、私が自宅にいて聞ける人がいないから当然なのだけど。
頭がパニックになっている様を女……というよりは女の子、という容姿の妖怪は、きょとんとした表情で私を見つめていた。

「あの……アリス?」
「何よ」
「私帰るよ…」
「だから帰らなくていいって言ってるでしょ?」
「なんでぇ…」
「それは魔理沙が戻ってきてからよ」

さっきからこのような会話をこの妖怪と繰り返している。
妖怪は鮮やかな青い髪を揺らし、深い溜め息を吐いた。
どうしてこの子を帰さないことにそこまでこだわっているのか気になるでしょう。
それは……まあ約一時間前にはここにいたはずの魔理沙の口からはっきりと聞きたいことがあるからだった。
悪く言えばこの妖怪を監禁していることになるのだけど、それを聞くためにはこの妖怪がいなくてはならないので、こうして魔理沙の帰りを待ち続けていたのだった。

「………」
「……何よ。まだ何かあるの?」

妖怪はまだ私を見つめ続けていた。
小動物のような瞳で怯えたように見つめる様に、私は悪人扱いをされてるようにしか思えなかった。
いや、確かに悪人のようなことをしているのだけど。
あまりにもその汚れのない瞳に見つめ続けられたせいか、心を深く突き刺されたような思いになる。
私は瞳で訴えてくる妖怪にその要求を聞いてやることにした。

「ねえ、アリス……私の名前、呼んでほしいな…」
「……は…?な、名前…?」

聞いたのはいいけど、あまりにも唐突すぎて私は驚くしかなかった。

な、名前?ええっと……。

私は先程から姿を眩ましている魔理沙から、この妖怪の名前を聞いたような気がして記憶を辿る。
しかしすぐに出てこなかったので、妖怪は寂しそうに自ら名乗った。

「にとり…って呼んでくれる?」
「は、はあ……にとり、ね」

別に興味ない、とでも言うように私はその名を呟き、妖怪から視線を反らした。
どうせまた名前なんて忘れちゃうだろうと思った。
反らした時、ちらっと見えた妖怪の表情から涙が零れたような気がした。
でも、もう視線を戻すことは出来ない。
その涙を確認してしまったら、私はその涙の処理をしなくてはならない。
泣いた子をあやすのは苦手だ。
ここは見て見ぬふりをする。
今の私にはこの子が泣いても泣き止ませることが出来ない。

魔理沙、どうしてこの子を置いて行ってしまったの?
この子は魔理沙の何なの?

この、にとり、って子と魔理沙は一体どういう関係で、いつ知り合って、どうして私の所に連れてこられたのか。
いろいろと聞きたい。
でも、肝心の本人がいないのでどうすることも出来ない。
今の私にとって、にとりはただ邪魔者という扱いでしかなかった。



●○●



「ねえ……」
「……今度は何」
「貴女ってさ、いつもそんななのか?」

事ある毎に妖怪は私を呼び止めては質問をし始める。

いつも何してるんだ?
魔法使いってどんなことが出来る?
魔理沙が好きなのか?
いつから二人は出会ったんだ?
ねえ、ねえ……―

次から次へと質問攻めにあう。
私は邪魔者に興味がないので質問には一切答えないつもりだった。
この質問をされるまでは。

「私を抱き締めてくれないか…?」
「はあ!?」

思わず声が上擦る。
変なことを言い出した妖怪は、しかし真剣な瞳で私に訴えかけてきた。
ずっと放置され続けているのに、何故私にそんなことを平気で頼めるのか。
小さな頭で一体何を考えているのかしら。
にとりは小さな声で、

「だって魔理沙が来ないから……寂しくて」

と囁いた。
私だって寂しくて仕方がないのに、なんて憎たらしいことを言うのかしら、と私は内心思いながらにとりを見つめる。
それでも、突然の展開に私の興味は無関心から小さく変貌した。

「私なんかでいいの?」

こくりと頷く小さな頭。
この子はまだ、変貌の裏で私の心に歪んだ感情が芽生えたことに気付かない。

苛めてやろう。

そう思った。
良く言えば純粋、悪く言えば単純なこの妖怪を困らせてやろうと、私は客間のソファーに腰掛け、膝の上に座るように促した。
何の躊躇もなく、そっと私の膝に乗った小さな身体を私は後ろから抱き締めた。
でも、ただ抱き締めるだけじゃ面白くないと、歪んだ感情は私の手を小さな膨らみへと誘った。

「……ひっ…!」
「そんな簡単に優しくしてあげるとでも思った?」

既ににとりの頬は紅潮し甘い吐息が混ざる。
衣服の上から小さな膨らみに手をかける。
小さいが成長がみられる膨らみは、それでもまだ私の手に収まるくらい可愛らしいものだった。
あまり手にかけることのないそれを、私は入念に弄くり回した。

「やだっ……こんなの、ちが―」
「あんまり知らない人に変なこと頼むのは良くないってこと、私がこうして丁寧に教えてあげてるのよ?」
「アリス…いや、いっ…」
「貴女が間違っちゃったからその結果を教えてあげてるの。しっかり味わいなさい」

逃げ出そうとにとりは暴れるけど、後ろからしっかり抱き締めているので身動きが取れず、私の思うがままに弄られた。
悪戯されて服がくしゃくしゃになる。
時々小さな膨らみの蕾を摘むと甘い息が混ざった。
それの繰り返し繰り返しの度、思うがままに私にされ続けるにとりを見ていると可愛らしいとまで思えた。

「こう、私の意のまま操られてる貴女って人形みたい」
「私は貴女の人形なんかじゃない…」
「もう喋れるの?胸は慣れちゃった?」
「う…煩い」
「ふーん。じゃあもうつまらないわ」
「え…?」
「もう止める。さあ降りて」

この時にとりがどんな表情をしたのかなんて、後ろの私が知る訳ない。
ただ後ろ姿はとても寂しそうだった。
中々膝から降りようとしないにとりに私の悪戯心は動いた。

「どうしたの?重いから早くどいて?」
「……ここ…までしておいて……」
「え?聞こえないわ?」
「……ま…まだ終わらないでよっ…!!」

噴火したような顔で訴えられた言葉を聞いてぷっと笑った。
必死な様子のにとりが面白かったのと、さっきまで無関心だった自分が、今じゃこの子を可愛いとさえ思っていることが可笑しくて、それはもう、笑った、笑った。

「そんなに笑うなー!」
「ふふ。にとりは構ってちゃんね」

そんな笑っている私も、実はこうして構ってもらいたいと思ってる、構ってちゃんだったりするんだわ。



●○●

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!