君の瞳に恋してる、のかもしれない



●○●



「ぬえ?いるのですか?」

先程から私を呼び続けている声に、私は耳を貸してやらない。
理由は単純。
私はあの聖 白蓮とかいう人間が苦手なんだ。
地底で一緒にいた村紗がなにやら動き出したので私も後をこっそりつけていった。
村紗は他の仲間と共に、白蓮の復活のため動いていた。
その白蓮の封印が解かれるのを、私はいつものように失敗すればいいなと思い邪魔をした。
しかし白蓮の復活は、私にとっても益があることを後に知り、私は赦されないことをしたと後悔することになった。

だけど、信じられないことが起きてしまった。

復活を邪魔したのに、なんと白蓮は私を受け入れた。
普通ではこんなことをしたら怨まれるはずなんだ。
憎い妖怪なんて、退治してしまえばいい。
人間はいつもそう思っている。
だから私は、ああ…この僧侶に退治されてしまうんだな、と覚悟していたのに赦されてしまった。
あの時、曇りのない瞳で見つめてきた白蓮が、私は本当に苦手だった。

私より、訳の分からない奴だったから。






「ぬえ!ここにいたのですね!」
「(みつかったか…)なによ…私に何か用があるの?」
「ええ。貴女はこの道のスペシャリストですから」
「スペシャリスト?」
「さあ、一緒に来てください。客人が待ってるのよ」
「客?誰よ」
「貴女を必要としている人ですよ」

面倒くさいの一言を放つ。
白蓮がそっと差し伸べた手を払った。

「えー、どうしてです?ぬえ」
「言ったでしょ。面倒くさいって」
「でも……私は貴女を呼ぶと客人に約束したんです…」
「そんなの貴女の勝手でし…」

そこで白蓮の瞳を見てしまった。
一層潤いを増した眼で私を見ている。

「そういう顔しないでよ。私は…」

そんな顔が私はいやなんだ。
私はあんたの、そういう瞳に弱いんだから。

「お願いです、ぬえ…」
「もう…わかったわよ!!」

刹那、白蓮の顔が私に迫る。

「ありがとうございます!ぬえ!」
「ちょっと!放しなさいよ!」

瞳が輝きを増す。抱きついた白蓮の瞳が近い。
私は一生懸命見ないようにと視線を逸らす。
こんな至近距離で白蓮の瞳を見てしまったら、私はあんたに見つめられて動悸が激しくなっているのがばれてしまうかもしれない。
そんなのいや。恥ずかしいもの。
ねえ、どうして白蓮のことを見ると、こんなにも胸が苦しいの?

そんな私は、正体不明の感情に、きっと今日も惑わされているんだわ。



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