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サイハテ
08



――頬にあたたかいなにかが触れている。

おおきく包み込むような…あったかくて滑らかで……


「ナルト…」


心地よい、声。




「――…」

「おはよう」


いつの間にか、眠ってしまったようだ。


「……あ、」


なんでここにいるの、という声は喉の奥で消えてしまった。

でもサスケは、ふっと優しい表情を浮かべて。


「…さっき、クラスいったらお前いなくてさ……なんとなく、ここにいるだろなって…」


――オレの言いたいこと。
居場所さえも、サスケには分かってしまうんだね。


「…ふっ…汗かいてやんの」

「たりめーだ、走ってきたんだぜ」


そういって前髪をかきあげる。
おとなっぽい仕草。


汗の雫を浮かべる額に、無意識に指を滑らせた。


「バカサスケ……オレは大丈夫だって。昔から"何しても死なねぇ"っておまえ言ってたじゃんかよ」

「は、たしかにな…」

「だろ」


穏やかな風に運ばれてクスクスと笑い声が屋上を舞う。


「ま…健康そーでなにより」

「うん」

「……お前に、なんかあったらさ」


こつん、と額と額を合わされて、こそばくて身を捩る。


「お前になんかあったら、オレ、死ぬよ」

「――しぬ?」

「うん。お前いなくなったら生きてる意味がない」



そう言って、けっして人にはみせないような優しい優しい顔で、笑う。



(…だめなのに)

――…好き

(進まなきゃ、)

――オレ、この人が好き。


「はは……なにいってんだよもう…」


サラサラと指先を通りすぎる黒髪を撫でながら、オレは迷子の子供のような情けない声を上げた。


「バッカみてぇ……」



だけど


「……は、っ」



胸がいたくていたくてたまらなかった。


「…う…っ」

「……ナルト?」

「なぁ……っどうして…」

「……」


どうして…

無邪気に笑うあなたの姿をみて、一気にこみあげてくる想いに、涙が止まらなくなる。



「んでさぁ…オレたちは、兄弟なの…?」

「……ナル、」

「…なんでっ…好きになっちゃいけないのかなぁ……」


「……」



好きになってしまった


好きになってはいけないひと



「うっ……ぅっ…っく…」


サスケは泣きじゃくるオレの丸めた背中を、つたない動きでさすってくれる。


その手のひらがくるしいよ


兄ちゃんの手のひら

愛しい人の手のひら



「うわあああっ……」









「……帰ろう」

「――うん」


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あきゅろす。
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