サイハテ
04
「サスケのお嫁さんはオレが決めるんだ〜」
「そうかよ」
何度も繰り返される戯言。
非生産的な交わりあいが終わったあとは、意味もなくベッドでころころと寝る。
紡がれる会話は、痛くも悲しくも虚しくもなくて、他愛もないことばかり。
サスケのお嫁さんはオレが決める――…
彼の将来は、有望でなければならない。
「サスケはさー、でっかいIT企業に就職して、、充実した毎日送って、かわいいかわいいお嫁さんを貰うんだ。そんで幸せに暮らすの」
素敵な未来予想図
そこにオレは、いない。
"これ以上好きになっちゃいけない"
「子どもは、男の子と女の子がひとりづつ。そんで庭付き一戸建ての家立てて…あ、ペットも飼ってさ、そうだな…犬かうさぎ」
彼のためにも。
自分のためにも。
「オレは外国にでも旅にでようかなぁ」
「……ナルト」
"これ以上、彼を"
「そんで…っ」
「…オレはお前だけでいい…なにもいらない」
「……っ」
――愛してはいけないのに。
『もう戻れない』
彼は言った。
大好きな兄は、ひどく真剣な瞳をして。
オレも戻れないと思った。
なにかが確実に崩れていく音を聞いた。
絶望に似た空虚も覚えた。
でもね、サスケ。
戻れなくても、進むことは出来るんだ。
ここで立ち止まっていたら、ずっとこのまま。
それはあなたが望んだことで、オレは共犯者だ。
それでもいい、と言ったけれど、ダメなんだ。
こんな間違った気持ちの行く先は、幸福でも平和でもない。
あるのはただ漠然とした不安と
底なし沼のように広がる焦燥。
それはオレが堕ちてしまったら、きっと抜け出せなくなる。
だれもから羨望の眼差しを向けられる完璧な兄の将来が、めちゃくちゃになってしまう。
…だからオレたちは
進まなきゃ、いけないのに…
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