サイハテ
10
寒いな、と自分の腕をさすった。
「――ん…」
カタンカタン……
電車の、揺れる音。
(あ…オレってば…眠っちゃってたんだ…)
右半身に触れるあたたかい温もりに、深い夢の中に浸かっていたのだとすぐに思い出した。
(あれ、でも……)
さきほどまでほんのり明るかったのに、今は突き刺すような不自然な明るさだ。外は、反して鬱蒼と暗く、ときおり通りすぎていくビルにはてんてんとあかりが点いている。
腕時計をみやると、もう八時近くを回っていた。
「…サスケ…?」
「ああ、起きたか」
「うん…ごめん、あの…」
「…オレさ…時々こうやって山手線、迂回してた」
「…え?」
見上げると、サスケはゆるやかに笑っていた。ちょっぴりこまったように、眉根が寄る。
「家に帰るとお前がいて……無邪気に駆け寄ってくるから辛かった」
――だから山手線を何周も何周もまわって時間を潰してた。
「いっそこのまま、どこかへ行ってしまいたかった。だれも知らない町に……お前を弟として見てたガキの頃に」
「……」
「だけど山手線はただ廻るだけ…」
――そう、山手線は。
違う世界へ行き着くことも、還ることもない…
「――ナルト、降りよう」
「えっ……、」
ふいにサスケが立ち上がって、オレの腕を掴む。
オレたちは降りたのは、家から遠く離れた、来たこともない駅だった。
「…ちょ、サスケ!ここどこだってばっ…」
「知らねぇ」
「エェっ?」
「適当に降りた」
なんだそりゃ、とサスケを見上げるけど、依然として何事もなかったように答える。
「……適当って…」
適当といいながらずんずんと歩くサスケの後ろをついていく。
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