最果て
06
「できたぁ……」
初めてきちんと、自分で作った料理。
オムライス、キャベツのサラダ、そして苺。
作ったといっても、サラダは切っただけであるし、苺は皿に盛り合わせただけだった。
「うん、味はどうかわかんねーけど、うまそうだってばよー」
しかしナルトは嬉しそうに鼻を擦った。
彼なりには上出来であった。
作り方がわからなくていちいち調べたホワイトソースも、滑らかな湯気をたてながら美味しそうに卵にかかっているし、自分が選んだ苺はつやつやと実が綺麗だった。
「…サスケまだかなあ…」
もう七時を回っていた。
そわそわと落ち着かない様子で、リビングのソファに腰かける。
膝に手を置いたとき、ガチャリと玄関の開く音がした。
「あっ…!」
とんとん、と規則正しい足音はこちらに向かってくる。
「ただいま……」
「お、おかえり!」
ナルトは飛び起きて、ドア付近で立ち止まるサスケに向き直った。
だが、いっしゅん合わさった視線はふいに逸らされる。
「…母さんは」
「あ、今晩は父さんと食べてくって、…だから俺、作ったんだ!」
きちんとテーブルに並べられた、ふたりぶんの夕食。オムライスはまだほかほか湯気を立てている。
ナルトは少し照れたように頬をかいた。
「…美味しいかどーかはわかんないんだけど……あ、いまお茶入れるから…っ」
「いらねえ」
「え…」
いい放たれた言葉に、茶瓶に伸びた手が止まる。
「…なんで?」
「腹減ってないし」
にべもなく言われ、ぽかんと呆ける弟を一瞥してから、サスケは無情にも踵を返した。
「ちょっ…まって…!」
慌てたようにその制服の裾を掴むと、向けられたのはひどく不機嫌そうな眼差し。それでもナルトは必死に見返した。
「お、おれ…がんばって作ったんだよ…」
「……」
「サスケの好きなオムライス……も、」
「……」
「ほら、苺もあるってば…好きだろ?いっしょに食べ…」
「…うぜえ」
裾を握りしめた手がパシンっと振り払われて――
「っ……!」
――赤くふくれる手の甲。
じんわりと広がっていく痛みと、ただよう不穏な空気。
「さ、すけ…?」
「……っ」
行き場を失った手もそのままで、困惑したように呼ぶが――サスケは勢いよくドアを閉めると、二階へと上がっていった。
つけっぱなしのテレビから、だれかの笑い声が響いていた。
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