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最果て
09 月光(サスケside)



本当、らしくもないが。
あの小さな胸を痛めるナルトを思うと、素直に沸いてくる謝罪の念。

不埒な思いのせいで兄として構ってやれないために、常に寂しい思いはさせているかと思うけれど――


とにかく、ドアごしでもいいから、一言「ごめん」と言わなければと思った。


「…ナルト?」


コン、と音をたててノックする。

だが、聞えてくるのは静寂だけで、一向に返事はない。


「――入るぞ?」


薄暗い部屋。
ドアの隙間から漏れていた明かりは―――


月のひかりだった。



「……ぅ…」


ベッドで小さくまとまるナルトが寝惚けた呻き声をたてた。


「…寝てんのか」

「……」


すうすう穏やかに聞こえる寝息と、差し込む月に誘われるように、ベッドへと近づく。


間近でみる、ナルトの寝顔。
白い顔が照らされて、さらに青白く見える。


「…泣いてたのか…?」


閉じられた目蓋から、頬にかけて続く、転々とした涙のすじ。
今は乾いてしまって、うっすらと跡が残っているだけだが、
睫毛につく雫はまだ新しいものだと分かる。



「…ごめんな…」


悲しませてごめんな――



睫毛に指を這わせると、綺麗な涙のつぶが、ゆるりと降りてきた。

たじろぐ小さな身体。



「……」



だけど、これ以上ここにいられなかった。

また脳を蝕んできた禁忌な欲望――



近くに放られていた毛布を着せてやると、足早に立ち去ろうとした。



「……さ…」

「……、」


起きてしまったのか、と振りかえるが、目蓋は閉じられたままだ。


代わりに開いた控えめな唇が―――



「……さすけ…」



小さく、俺を呼ぶ。



「――…」



ああ、なんでだろうな。


なんで、そんなに。


お前は……





寝言だとわかっていても、とめられなかった。


「ナルト…?なんだよ?」

「……んん…」


駄目だ、駄目だ、駄目だ…



「なあ…?」


顔が、近づいていく。
薄く開いている、赤ん坊のような。赤くて小さな、ナルトの―――




「んぅ……」




ナルトの唇。






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あきゅろす。
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