氷の心と焔となる者 054 水色のおしゃぶり 「ネロ…でいいよな。ネロ、今『初代プリーモ直々に頼まれた』…って言ったが、それはいつの話だ?」 プリーモはすでに亡くなっている。 それはもうずっと昔の事だし、今更なぜアルコバレーノが増える? 疑問だらけなのは悠李だけじゃない。 その場にいる骸と獄寺と綱吉も疑問だらけだった。 「……プリーモからの書き置きだ。貰ったのは俺の祖先で、それから代々受け継がれて来た。それが、つい先日、ある夢を見た。」 ネロは小さな手で身振り手振りをして、説明した。 そして最後に言った夢≠ニいう単語に悠李が、つい先日に見た夢を思い出す。 あの眼の痛みが突然起きた日。 あの頭痛と共に目を覚ました日。 あの時、悠李は夢の中でプリーモと出会い、会話をした。 その夢だ。 そしてネロが続ける。 「夢でプリーモに会った。その時、俺は書き置きの意味と、俺の家系に伝わる代々受け継がれて来た力と、俺がこれからするべき事を教えられた。」 ネロは真剣な面持ちで尚も言う。 「そして俺がこれからするべき事の最初の事が、この世界へ来る事だ。」 わかったか、と後に続ける。 だが、骸と悠李がその夢に関しては記憶がある為、理解できたものの、綱吉も獄寺も理解するには無理があった。 「そんな事信じられるか!!!」 獄寺がネロが乗っているテーブルを叩き、怒鳴る。 その姿を見て、まぁそうだろうな、と納得する悠李。 そしてふと気付く。 雲雀がいない事に。 「……雲雀は?」 隣にいる骸の顔を見上げ、悠李は訊ねる。 「…さぁ?この子供が話し出す頃にはもうさっさと出て行ったみたいですよ?」 素っ気無く答える骸。 「…そう。……ちょっと探しに行って来る。」 悠李がそう言うが早いかすでに足が動いていた。 その瞬間だった。 「………何?」 急に腕を引っ張られる感覚に、悠李はその人物を見上げる。 「…別に雲雀恭弥なんて放っておけばいいじゃないですか。」 悠李の腕を引っ張り、行かせまいとしたのは骸だった。 その面持ちは、呆れと、別の感情が伺える。 「………でも、そうもいかないだろ。」 もし、雲雀がリボーンの読者とか雲雀本人のファンとかに会ったら? 別に雲雀本人の心配はあまりしてない。 だけど、「群れるな。」というだけの暴力を、彼がやったとしたら。 ファン達があまりにも可哀想だ。 「…………。」 骸が悠李から顔をそらす。 その表情は、悠李からは見えなかったが。 悲しそうな顔そのものだった。 「おい。お前。まだ話は終わってないぞ。」 ネロが悠李に向かって言う。 「悪い。後にしてくれ。」 「そうもいかないぞ。俺がここに来た大事な理由は、お前にあるんだ。」 「…?俺に?」 そこで、辺りは静かになった。 なんともいえない静けさ。 その中で、ネロが重々しく口を開く。 「お前、このままじゃ死ぬぞ。」 そして、そう言い放ったのだ。 _ [*前へ][次へ#] |