[携帯モード] [URL送信]

小話集
空蝉の鳴き声

大阪夏の陣前夜
政宗→幸村
今更ながら捏造注意









あの燃えるような赤を纏っているものは、何だ。
死が、怖くないのか。
人ではないのか。
ならば、鬼か。
黄泉から死人を連れ行く為参りし鬼なのか。

「貴様に問う!死を恐れていないのか!!」

無論俺だって戦場に出るのならばそれなりの覚悟はしている。
しかし、死が怖くなどない人などはいないと今日まで信じていた。

俺の鉄砲隊を蹴散らしながら、血塗れの男は俺を垂直に見る。

「この命、纏いし具足より軽きもの。だからこそ、今ここに全てを賭けている!!」

馬に跨がり土埃を立てながらその場を去っていく。

「…なぜだ」

武士の意地など、もう無意味だろう。それは誰の目にも明らかだ。

気づけば赤茶色の土に膝着いていた。

幸村に対峙した時、首を撥ねられるかと思った。
だが、あいつは俺を生かした。

死の覚悟がないことが、己の腹から透けていたか。

「…わかってはいるが、なぜこうも死は恐ろしいのか」

幸村の去った方向は、いつまでも血煙の匂いがした。



[*前へ][次へ#]

19/21ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!