小話集
空蝉の鳴き声
大阪夏の陣前夜
政宗→幸村
今更ながら捏造注意
あの燃えるような赤を纏っているものは、何だ。
死が、怖くないのか。
人ではないのか。
ならば、鬼か。
黄泉から死人を連れ行く為参りし鬼なのか。
「貴様に問う!死を恐れていないのか!!」
無論俺だって戦場に出るのならばそれなりの覚悟はしている。
しかし、死が怖くなどない人などはいないと今日まで信じていた。
俺の鉄砲隊を蹴散らしながら、血塗れの男は俺を垂直に見る。
「この命、纏いし具足より軽きもの。だからこそ、今ここに全てを賭けている!!」
馬に跨がり土埃を立てながらその場を去っていく。
「…なぜだ」
武士の意地など、もう無意味だろう。それは誰の目にも明らかだ。
気づけば赤茶色の土に膝着いていた。
幸村に対峙した時、首を撥ねられるかと思った。
だが、あいつは俺を生かした。
死の覚悟がないことが、己の腹から透けていたか。
「…わかってはいるが、なぜこうも死は恐ろしいのか」
幸村の去った方向は、いつまでも血煙の匂いがした。
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