あるところに、世界でも三本の指に入るほど、とても大きな大きな財産を抱えている鬼夜菊代というご婦人がおりました。ご婦人は有数の財閥の頂点に立たれております。
莫大な財産を抱えていても不思議はありませんでした。
そんなご婦人は、最近、毎日のように思っておりました。
自分はもう若くは無い。先の人生を歩むとしても、もうそうは歩けないだろう…と。
財閥の頂点に立たれておりますご婦人は、自分の寿命を覚り始めました。となれば今自分の抱えております、財閥…そして財産はどうするのか。
菊代は考えました。
信頼のおける者に自分の全てを譲り渡したい、と。
しかしながら菊代は信頼できる者とは一体どういう者なのだろうか?と、根本的な問題に直面してしまうのでございます。
財産を譲り渡すということは、自分を譲り渡すということも同じ。生半可な気持ちを持つ者に全てを譲り渡したくは無い。
考えた末に血統関係であり、気の許せる、信頼できそうな者達を選ぶことにしました。
さても彼女は選んだ者達の中から遺産相続人を決めることにしたのです。
これから語らせて頂くのは、とある遺産相続人を巡るのお噺にございます。
−味方の見方のデスカ?−
(D.W&ラプソディ合同劇場)
「鬼夜菊代の全ての財産は寄付することにするでございます。そうすれば争いの火種はなくなるでございます」
ノッケから菊代はこのお話の最後に言う予定であろう台詞を言ってしまいました。
まさかの展開に出演者は「待て待てまて!」と心の中でツッコミました。
ダラダッラと注意事項や司会者達の退屈な挨拶、そして無駄に長い冒頭の末にやっと幕が上がったこのお話、いきなりピリオドを打つのは、出番を待っていた自分達の時間が無駄になるというか、なんというか…とにかくあんまりな展開です。
お話は終わったとばかりに椅子から腰を上げた菊代に、待ったの声を掛けたのは、
「菊代大祖母さま。これでは劇になりませんわ。どうぞお座りを」
まるで天使のような笑顔。
声を掛けたのは菊代の孫にあたるラソーニア・ロールティオ、ラーラでした。今回の遺産相続人に選ばれているひとりでもあります。
あまりにも見たことのないような社交素敵スマイル、そしてあまりにも穏やかな敬語に、司会席からこの世の終わりを見たようなキルの奇声が聞こえましたが、そこはラーラ。長テーブルに置いてあったコップを音無く掴み、キルに投げつけました。笑顔は崩しません。
よってキルはラーラの笑顔でくり出した天誅(てんちゅう)により、その場に倒れてしまいます。
「あっらん、キル大丈夫かしらん? 痛い愛情を受けちゃったわねん」
「単に、怒…の情をぶつけられた…だけっす…ッ、ぐふ?!!」