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『仏の顔も3度まで』


こいつはその言葉を知っているだろうか?


あたしはヒクリ、と口元引き攣らせた。
原因は目の前で読書している自分より年下の片思い相手。

中学生なんだけど大人っぽい奴。
 
現在片思い中の黙ってりゃ天使のように綺麗な少年、猛烈に好きだとアタックして玉砕している事もなんのその。

生意気な態度でも、好きになったものは仕方がないとしよう。
ただ、アタックも何もしてないのにあたしが視界にいるだけで「ウザイ」やら「邪魔」やら言われれば少しならずショックを受ける。
 
モチロン、最初は我慢していた。

どんなに邪険扱いされも、あたし我慢していたんだ。
 
ちゃんと言われた通りどっかに行ってた。

3度どころじゃない。
仏の顔よりも温厚な顔だと思う。なんて健気だろう、あたし自身にチョー拍手を送りたい。


ああ、でも、もう我慢の限界。


「何だよ。どっかいけ。眼鏡」
 
 
嫌々そうに見てくるあたしをまた邪険にする。

別に押し掛けた訳でもなく、普通に約束して家に遊びに来たのにどっかいけって……普通言わないでしょ? 此処であたしはいつも「いいじゃんか」なんて普通に接しているから悪いのだ。


というか、あたし、もう。


「ああそうですか。分かった。どっか、行きます! 行けばいいんでしょ? 俊太の視界にも入らないところに喜んで行かせて頂きます。ついでに俊太好きなのもやめるから」
 
 
フン、と鼻を鳴らして俊太を睨む。

俊太は驚いたように目を丸くして見てきた。


ええ、逆ギレですが何か?
忍耐と堪忍袋の緒の限界でございますよ。

こんなクソ生意気なガキに恋したあたしが馬鹿でした。捧げた青春返して下さい。
 
ムカムカする。

この恋は終わりにしよう。

青春が無駄になるだけだよ。格好イイ男の子でも見つけよう。まだあたしの青春は取り戻せる筈だし、どうせ俊太の頭の中のあたしは、眼鏡と馬鹿とウザイの3本柱で成り立ってるんだよ。
 
眼鏡眼鏡って、眼鏡掛けて何が悪いんだっつーの! 馬鹿にすんなよ!



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