001
『仏の顔も3度まで』
こいつはその言葉を知っているだろうか?
あたしはヒクリ、と口元引き攣らせた。
原因は目の前で読書している自分より年下の片思い相手。
中学生なんだけど大人っぽい奴。
現在片思い中の黙ってりゃ天使のように綺麗な少年、猛烈に好きだとアタックして玉砕している事もなんのその。
生意気な態度でも、好きになったものは仕方がないとしよう。
ただ、アタックも何もしてないのにあたしが視界にいるだけで「ウザイ」やら「邪魔」やら言われれば少しならずショックを受ける。
モチロン、最初は我慢していた。
どんなに邪険扱いされも、あたし我慢していたんだ。
ちゃんと言われた通りどっかに行ってた。
3度どころじゃない。
仏の顔よりも温厚な顔だと思う。なんて健気だろう、あたし自身にチョー拍手を送りたい。
ああ、でも、もう我慢の限界。
「何だよ。どっかいけ。眼鏡」
嫌々そうに見てくるあたしをまた邪険にする。
別に押し掛けた訳でもなく、普通に約束して家に遊びに来たのにどっかいけって……普通言わないでしょ? 此処であたしはいつも「いいじゃんか」なんて普通に接しているから悪いのだ。
というか、あたし、もう。
「ああそうですか。分かった。どっか、行きます! 行けばいいんでしょ? 俊太の視界にも入らないところに喜んで行かせて頂きます。ついでに俊太好きなのもやめるから」
フン、と鼻を鳴らして俊太を睨む。
俊太は驚いたように目を丸くして見てきた。
ええ、逆ギレですが何か?
忍耐と堪忍袋の緒の限界でございますよ。
こんなクソ生意気なガキに恋したあたしが馬鹿でした。捧げた青春返して下さい。
ムカムカする。
この恋は終わりにしよう。
青春が無駄になるだけだよ。格好イイ男の子でも見つけよう。まだあたしの青春は取り戻せる筈だし、どうせ俊太の頭の中のあたしは、眼鏡と馬鹿とウザイの3本柱で成り立ってるんだよ。
眼鏡眼鏡って、眼鏡掛けて何が悪いんだっつーの! 馬鹿にすんなよ!
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